◆ 桐壷の更衣 ◆

 たくさんの女御や更衣がお仕えしていた後宮で、さほど身分は高くないのに帝の寵愛を独り占めしておられた女性がいました。桐壷の更衣です。

この時代、身分が何よりも重んじられました。親の身分で姫君の身分が決まり、帝は自分の意思ではなく相手の身分に応じて公平に愛を分け与えなければなりませんでした。
しかし帝は桐壷の更衣ばかりを愛されたため、更衣は皆からイジメを受け、段々体が弱っていきます。帝はそんな更衣がますます可愛く、お側からお離しになりません。

更衣は玉のように美しい皇子を産みます。帝にとっては、目に入れても痛くないはほど可愛い皇子。すでに第一婦人との間に皇子が産まれていた帝ですが、世間ではこの子が皇太子になるのではないかと噂しています。
帝の寵愛を奪われ、息子の皇位まで奪われてはと、心穏やかではない第一婦人の弘徽殿女御。 この弘徽殿女御たちのいじめにより、桐壺の更衣は、皇子3才のときに亡くなってしまいます。

後ろ楯を失った皇子。このまま成長しても、争いの種となるであろうことを心配された帝は、この皇子を臣下に下す(皇位継承権をなくしてしまうこと)判断をなさいます。
玉のように光る美しい皇子が、源という名字を与えられ『光源氏』の誕生です。

帝から一心に愛され、美しい皇子を産んだ更衣。幸せそうに思いますが、これが悲劇の始まりだったのです。一心に愛されたが故に、早くに命を落としてしまった、なんとも不運な姫君でした。