◆ 若紫① ◆
ある春の日、光源氏は流行り病にかかり、霊験あらたかな僧侶に加持祈祷してもらうために、北山に出掛けてゆきました。

加持祈祷のお蔭で気分の良くなった光源氏は、近くを散歩していると、
綺麗に整えられた芝垣の前にやってきました。
中のお庭を覗くと、品のある尼の姿が見えました。
そこに可愛い女の子が目を真っ赤にして走ってきます。

「雀が逃げてしまったの!伏篭の中にいれておいたのに‥」

光源氏はその少女に釘付けになります。
恋しい恋しいあの方(藤壷の宮)にそっくりだったのです。

早速調べさせますと、その少女は藤壷の宮の姪っ子でした。
藤は紫色。藤壷にゆかりのある少女‥ 若紫との出会いです。