◆ 藤壷② ◆

恋しい恋しい藤壷の宮。
心の中から離れることはありません。

藤壷の宮の姪である若紫を手元においても、あくまでも身代わりで、宮にかなうはずもありません。
しかし父 帝の最愛の妻である方へ想いを寄せるなどとは恐れ多く、決して誰にも知られてはならない秘密の想いでした。

ある日、藤壷の宮が軽い病でお里に下がっておられると耳にした光源氏は、お見舞いに行かれました。
藤壷の宮お付きの王命婦を必死にかきくどき、なんと藤壷の宮のご寝所に入り込んでしまいました。
腕の中の宮は、なんとお美しいのか‥
柔らかくたおやかで儚げでいとおしく
無我夢中で抱きしめます。
しかし夢にまでみた甘い時間は瞬く間にすぎ、朝の気配が漂います。

誰にも知られてはならない想い
誰にも知られてはならない時間

我にかえると、恐ろしさに身が震えます。
しかし しっかりとこの腕に抱いた確かな余韻は、ますます光源氏を大胆にさせてしまうのでした。