◆ 葵の上② ◆

いよいよ葵の上の出産が近づいてきましたが、まれにもないお苦しみようです。
たくさんの僧侶が祈祷しますが、苦しみもがく葵の上。
決して弱みを見せなかった妻が苦しむ様子はいとおしく、側から離れずつきっきりで見守っていらっしゃいます。
 
そんな様子が六条御息所にも聞こえてきます。
 
妻とはしっくりいっていない‥
そう言っていたのに、なぜ子供ができるのだ‥
なぜ私にはあの方の子ができないのだ‥
 
この頃また自分がコントロールできない御息所です。
 
いよいよもうお生まれになる その夜のことでした。
やはりたいそうお苦しみですので、護摩をたき一層祈祷を強めます。
葵の上の顔をご覧になると、なんと六条御息所の生き霊が乗り移っているではありませんか。
 
光源氏は、葵の上の苦しみの元をしっかりと見てしまいました。
 
ふっと正気に戻った御息所は、自分の髪から護摩にたく芥子の匂いがして、ハッ とします。
もしやまた我が体から魂が抜け出していったのではないかと。
 
なんとか無事男の子を産んだ葵の上でしたが、容態が急変しあっけなく亡くなってしまわれました。